開業して25年、初めて患者さんをお断りしました。
実は、私、総入れ歯にも少し自信があるんです。
一般に上の総入れ歯は誰でもそこそこの物はできますが、下の総入れ歯はなかなか吸着させることができません。
いや、吸着しているのを見たことがありません。
ところが、昨年位からようやく吸い付いてはずれにくい下顎の総入れ歯を作れるようになってきました。
ほんとうにいろいろな試行錯誤の末に、できるようになってきたのです。
「今まで作った入れ歯の中で一番いい。」と褒めて下さる患者さんもいらっしゃいます。
ところが、ある総入れ歯の患者さんが来られまして、「よっしゃええのを作ったろう!」
と張り切って、経費無視で作ったのですが、
できてみると、「あそこを削って、ここを削って」と言う事を聞いてくれません。
しかも入れ歯の吸着にとって大切な所を全てです。
そしてとうとう、小さい、どんな歯医者でも出来る、どうしようもない入れ歯になってしまいました。
これまで使っておられた、幅の狭い、いわゆるスケートデンチャーの出来上がりです。
今までの努力は何だったんだ!!!
お若い身なりのその方は、結局総入れ歯にしているということを受け入れることができず、できるだけ小さな入れ歯が良かったのでしょうか・・・
その結果、入れ歯が吸着せず動いて痛いところがでてきました。
小さな面積で咬む力を受けると痛くなるのは当然なのですが、入れ歯が安定せず、動くとなおさらです。
でも患者さんは聞く耳を持ちません。
仕方なく、粘膜調整材というクッションを入れ歯の裏に貼り付けましたが、
こちらは1ヶ月もすれば変性して硬くなるので、毎月替えなければなりません。
ところが、あまりそれが続くと保険で認められなくなるのです。
つまり報酬が得られないということになります。
そこで事情をお話して、粘膜調整材の代わりにシリコンを貼り付けることを提案したのですが、こちらは自費で10万円しますので、拒否されました。
そして、もう1つ保険で総入れ歯を作ってくれとおっしゃるのです。
これには切れました。
保険治療と言うのは、料金が決まっているので、手間隙掛けるほど赤字になっていくのです。
しかも一度入れ歯を作ると、半年間は再製作が認められていません。
おまけに、開業以来25年の努力を否定するような総入れ歯をまた作れと言われるのです。
あなたならどうします?
私はとうとう、「申し訳ありませんが、こんな入れ歯はもう作りたくありません。」とお断りしてしまいました・・・
しかしながら反省すべき点も多く、赤字とむなしだけが残る、悲しい結果になりました。
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