初日は気持ちが高ぶるぜよ?
朝は5時前に目覚めてすぐシャワー、昨日ホテルの下のコンビニで買っておいたパンとジュースで朝食、意気揚々とホテルを出発した。
徳島駅からJR牟岐線阿南(海部)方面(下り)、5:47の始発で立江に向かった。
懐かしの無人駅に着いて小さな駅舎に入ると、登山家風の、少し汚れた感じの人がベンチに座っている。
話を聞くと、ここで野宿(?)したとか。
この駅舎は扉が閉め切れて、野宿には具合がいいそうだ。
何でもおじいさんが結構有名なお遍路だったとかで、そのことを知ってから彼も遍路を始めたとか。
それにしても真冬に野宿遍路をする人が居ようとは、世の中すごい人がいるもんだ・・・
話は弾んだが、余りのんびりしてられない。
もう一度トイレを済ませ、遍路装束になって「お元気で!」と挨拶をして出かけた。
アスファルトに、金剛杖を突く乾いた音が響いて懐かしい。
まずは前回最後にお参りした立江寺に寄り、再び来れた事へのお礼と道中の安全を祈願。
それにしても、この晴れがましい照れくさいような気持は何だろう。
しんどいことをしに行くのに、お遍路するって変に嬉しいし、変に楽しいのだ。
きっと茂木健一郎風に言えば、しんどさを乗り越えて、どこそこまで周れたという達成感・成功体験が、脳内にドーパミンを放出させ、それによる快感を再び得るために、また歩きたいと思ってしまうのだろう。
さて前回の区切り打ちで最後に泊まった、この近くの「鮒の里」に挨拶に行こうと思っていたのだが、どうも道を思い出せない。
また既にマラソンモードになっていたためか、気持ちが急いでいて、寄り道したくないという気持ちにもなってしまう。
お土産を買って行こうと思っていたのに、結局忘れてしまったし、どうしようもない不義理男だ。
一応、近くの赤い橋のたもとで、大体の方向に向かって手を合わせておいた。
しばらく行くと、空は曇ってはいるが、懐かしい田舎の風景がそこにあった。
朝の冷気が清々しい
木造のバス停にあった、こんな看板も嬉しいもんだ。
28号線を4キロほど行った突き当りを右折、しばらく行くと、今度はこんな看板があった。
「いやしのみち」という言葉の、優しい響きに癒されますゥ。
さらに15分程22号線を進むと、何と今年の夏、灼熱の徳島縦断中に渡った、あの勝浦川に突き当たったではないか(たぶん同じ川の上流なのだろう)!
しかし川はこちらの思い入れを軽く無視して、あくまでクールに流れている。
懐かしいな~・・・。
角のローソンで昼ご飯用のおにぎりを買い、川沿いに左折。
16号線をさらに進む。
道路ミラーでパチリ!
生比奈ではこんな看板を見つけた。
猪の剥製が2匹、逆さまにぶら下がっているところが、いかにも獲物という感じ。(合掌)
そのまま直進。
進行方向右側のお饅頭屋さんでは饅頭を3つ買った。
民宿「金子や」さんに入る道が分かりにくかったが、なんとかクリア。
「金子や」さん脇の細い道を20番鶴林寺へと登る。
いきなり急勾配なのだ!
この山あいの向こうから歩いてきました。
30分程で
こんな感じ
さらに30分程で
鶴林寺の山門が見えてきた。(10:05)
焼山寺の遍路ころがしに比べ距離は短かったものの、結構可愛がってもらいました。フウッ・・・
鶴林寺では、すでに2人のお遍路さんが休んでおられたが、小生は急いでお参りを済ませ、饅頭で栄養補給して、大師堂前から下りる細い道を、次の21番太龍寺へと向かった。
しばらく下っていくと、山中に突然こんなプールが現れた。
孤独なプール
かなり汚れているし、プールサイドがやけに狭いぞ!
周りにも人家が少ない。
夏には泳ぐ人がいるのだろうか???
これも故郷創生の1億円か何かを利用して作ったのだろうか。
「何か周りと不似合いな感じがするなあ・・・」と独りでブツブツ。
でも四国の自然は豊かで、途中キィウィの様な実を見つけたりして、一人歩きは結構楽しい。
そうこうしているうちに、水井橋まで下りきった。
鶴林寺から450m下り、これから太龍寺まで470m登るのだ。
想像していたより、川も橋も大きい。
鉄砲
この先の山に分け入るのだが、登山道に少し入った東屋付近で、向こうから誰かが現れた。
逆光でよく見えないが、何か変な格好。
棒みたいな物を肩に掛けている。
近づいて驚いた。
棒みたいなものは鉄砲だった。
一瞬たじろいだが、愛想のいい笑顔をされてほっとした。
なんでも、猪や鹿を狙っているとのこと。
「今日持ってるのは小さいやつ。」とおっしゃって、頼みもしないのに鉄砲をみせてくれた。
「え~っ!この辺タマ飛んでくるかも知れんのぉ~!!!」と一瞬マインドトーク。
これ程近くで現役の鉄砲を見るのは初めてだが、何ともナマナマシクて少し怖い。
それにしてもなんと軽装。
ゴム長靴は履いておられるが、その辺を散歩するような歩き方だ。
こっちが気合が入りすぎているのかも・・・
話し好きの方で、お遍路の遭難を3回知っているが、最近も3人の捜索をしたとか。
え~っ!迷たらどうしょう・・・
ずーっと誰も歩いてないし・・・
明日のニュースに出ている自分が目に浮かぶ。
「大阪の遍路、消息を絶つ!」なんて・・・
でも、一人歩きは用心深くなるから大丈夫とのこと。
その方も何度も遍路をされているそうで、いろいろとお話を伺った後、「がんばって!」と励まされて分かれた。
ちょっと心配・・・
でもそこから1時間弱で21番太龍寺の山門が見えてきた。
(12:38)
保健室のうら若き先生
と、この写真中央の石段手前に差し掛かった所で、1人の若い女性に声を掛けられた。
日頃、若い女性に声など掛けられたことのないおじさんには驚きだが、軽装のこの人、平気で話してこられる。
どうやら小生の遍路姿に安心されたようだ。
実はここまで登って来るのにかなり消耗していたのだが、この人歩くのが早い!
見栄を張ってあくまで平静を装って歩いたが、石段は容赦してくれず、膝が悲鳴を上げそうになった。
本堂と太子堂を別々にお参りをしたが、一人旅の女の人はな~んか頼りなげなものだ。
納経を済ませ、「この近くに、弘法大師の像が絶壁に座っているのがあるので、私はそっちに行きます。」と言うと、この人なんと一緒に行くと言われる。
それじゃあということでご一緒することになったが、その途中、彼女が小学校の養護教員をされておられることを知り、小生もまた小学校の校医をしているので、保健室つながりですごく驚いた。
さて、ロープウェイの乗り場から少し歩いた岩の上に、お大師様がこちらに背を向けて座っておられるのだが、何と彼女がいきなり2メートル程のその岩を登り始めたのだ。
お大師様の後姿
若いということは、驚くほど大胆。
あっと言う間にお大師様の横まで上がってしまった。
小生もとやってみたが、怪我しそうでやめた(実はしんどかった)。
帰り道では、彼女がやっておられる音楽のこととか、いろいろ話ができて楽しかった。
太龍寺の静かな石垣
駐車場でお別れしたが、保健室の美人先生、レイカさんに幸あれ!!!
その後は山道を下り、
民宿「阪口屋」さんのあたりで28号線に出る。
可憐な野いちご
ハート型の葉っぱ
28号線を南に下った突き当たりに(195号線)暗い林があり、その奥に大根峠への上り口があるのだが、非常に分かりにくい。
上り口の杖、不気味?
なにしろ真冬の午後3時過ぎだ。
人っ子一人いない暗~い山に分け入るのは、ちょっと勇気がいる。
あまり高い峠ではなかったが、12番焼山寺への遍路ころがしの後の玉ヶ峠のように、この大根峠も、疲れた足には結構きつかった。
ようやく細い山道から抜け出すと、そこには大きな牛舎があり、その横から、やっと人の通れる(?)舗装道路に出た。
そこを左に歩き続ければ22番平等寺に着くはずだが、さっぱり遍路マークが見つからない。
たまたま出合ったおじさんに聞いてみると、この方向で間違いないようだ。
この方、お接待にと、持っておられたみかんを1つ2つと下さり、4つでは数字が悪いと言って、結局6つもいただいた。
お気持ちが、ありがたくて重い・・・。
でもう後少しとがんばって、なんとか5時前に平等寺に着き、納経を済ますことができた。
この日の宿は、ほんとに平等寺の隣の山茶花さん。
門前の食堂という造りだが、部屋は広くて新しく清潔だ。
しばらくして、小生と同年輩のお遍路さんがやって来られたが、この方は東京からだそうで、3日後の室戸荘でも再び同宿になった。
とても優しい方だった。
宿の料理にも大満足。
2人ともビールと日本酒を少し飲んで話ははずんだ。
おかみさんは年2回海外旅行をされるとか。
趣味で遍路宿をやっておられるような余裕が心地よく、問題なく五つ星なのだ。
歩行距離:30.7キロ 宿泊:山茶花(☆☆☆☆☆)
「歩き遍路に魅せられて」の[目次に戻る]
「2007年暮れ 真夏の次は、いきなり冬なのだ!」の[目次に戻る]
[前日へ] [翌日へ]
最近のコメント